認知神経リハビリテーションスペシャルセミナー2019

認知神経リハビリテーション懇親会にて日本人セラピストの質問に通訳を行う松田氏

 認知神経リハビリテーションの奥深さを改めて思う2日間でした。

従来の歩行を考えるリハビリの多くは、身体を支える足をと言えば、物理的に支える接地面と足等の身体までを扱う事が定番。

 

 しかし私たちは進む方向の空間を認識して予測する、その空間はまだ未来であるが、そこへ到達する予測を脳はコントロールしている。また同時に歩き進んできた後ろ(過去)の空間をも取り込みながらであり、それらが無くては、私たちは歩くことが困難な状況に陥ってしまう。・・・言っていることがよく解らない?

 

 
 例えは、映画インディージョーンズのラスト、洞窟が崩れ落ちるのを避け逃げる状況が本当に私たちに降りかかったとしたら、後方の空間がなくなるというのは如何ほどの恐怖か?空想世界の出来事というならば、高い崖っぷちに立った時、背後がなく後ろは下に落ちるしかない空間に立つ時の私たちはどれ程の緊迫になるだろう。子供のころに座ろうとした椅子を悪戯で外された時の事を思い出すと、それが解っていれば予測ができなんでもないが、予測できずに転がるまでの瞬間は、何が起きたのかの空白と混乱・・・また、暗闇で一寸先が見えぬ時に、想像できぬ時の心細い一歩、安心できずにおぼつかない歩き。

 

 

 これら状況に於ける私たちの身体の反応は、セラピストとして自身の想像力を働かせれば、身動きが取れなくなった時の恐怖や状況は正に麻痺に悩む方々が動けず固まり、身体に起きていることに似ていると思えるだろう。
 ならば、脳神経系の損傷によって起きている麻痺疾患を、単に体を機械的に動かし、刺激を与えるだけで十分でない事は明白となる。近年の脳神経医学の発達の中で、これらの現象が脳内の作用で起きていることは様々な報告から解るようになっているが、この患者の心理面、精神的働きまでを想像し、その理論を構築するだけに留まらずに、具体的なリハビリの方法まで創発させているイタリアの認知神経リハビリテーションセンターの凄さ、その研究と臨床をリードする脳神経系疾患リハビリテーション世界一と言われる御二人、C.Rizzello氏、M.Zernitz氏に教授戴いた2日間は本当に貴重な体験でした。

 


  このスペシャルセミナーの前に行われた学会主催のアドバンスコースの最後に次のように両氏は最後に言われた。『・・・繊維筋痛症の患者に機械的に働きかけて半ば拷問のような苦痛な訓練を治療として処方してしまうようなことは、今後それを行うことを私たちは行ってはいけない。行う事は恥と思わなければならない(患者が泣き叫ぶも関節の可動訓練を続ける映像を見てより)』


『認知神経リハビリテーションは複雑で難しいと思うかもしれない。しかしこの方法を考案したペルフェッティー先生は、人が人として人に施すものとして考案されたもの。複雑な機械や器具をつかうのでなく、脳に働きかける人が人の脳に働きかける。よって使う器具は非常にシンプルなもの(ジュータンを切ったものや固さの違うスポンジ等)それは人の脳が、セラピストが患者さんの脳に働きかけるものだからなのです』

 


 リハジムこるくぼ~どには、この英知溢れるイタリアと日本を行き来する松田氏に師事できる非常に恵まれた場であるが、この技法の習得には、日々向かい合う患者さん方をみながら弛まない想像と思考を続ける実践が不可欠です。昨日の経験をすぐにも実践することが出来るこの恵まれた環境を使い、昨日より今日、明日へと患者さん方と手を繋ぎ前を向いて共に歩こうとこれからも・・・・。